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25 Project Thanatos

mission 25 【プロジェクト・タナトス】

少佐が指示された場所到着したとき、あたりに人の気配はなかった。
確かに指示された座標はここを示しているが……こいつは悪趣味だ。
しかしこのまま立ち止まっているわけもいかない。意を決して少佐は納骨堂の扉を押した。
中は思いの外乾燥していた。
中にはダイブ用の装置、モニターや各機器は稼働中だが人の気配はない。
よく見ると椅子の上にメモがある。
取り上げてみると装具の付け方が書いてある。
自分で何とかしろと言うことか。
ぎこちない手つきで何とか装置を装着し終えると、メモに指示のあったとおりに手元にあったボタンを押す。
そして暗闇が訪れるまで数秒しかかからなかった。


少佐が目を覚ましたのは、殺風景な部屋の中だった。
ふと気配を感じて起き上がると、そこにはヒプノスが腰掛けていた。
「おはよう」
「何がおはようだ!」
「私としては、新しい目覚めの時だと思っているんですよ」
少佐の不機嫌な様子を全く意に介さないで、ヒプノスは一杯のコーヒーを差し出した。
少佐は仕方なくそれを受け取ると言った。
「で、交渉はうまくいきそうか?」
「ええ。こちらの最低条件をのんでくれさえすれば、殆どの施設や機器、そしてこちらのスタッフ協力を譲渡します」
「その最低条件とは何なんだ?」
「まずは将来的に、仮想世界をコントロールするための安全装置を組み込むことを、同意してもらいます」
そう言いながらヒプノスは、いくつかの条項が表示されている画面を、目の前に大きく映し出した
仮想世界での被験者が、精神的にダメージやストレスを受けた場合、直ちに現実世界へ強制移動させることなど、本人の意志に反して閉じこめられることのない様なシステムに移行させるというのだ。
「もちろん訓練に使用する場合、全くの緊張やストレスを感じないわけにはいきません。しかし皮肉なことに彼らの行った“拷問”における精神状態の記録があります。それを基準にガイドラインを作成しました」
なるほど、リミッターをつける訳か。
しかしどうも腑に落ちない。
ここは正直に本人に聞くしかないと、少佐は口を開いた。
「しかしどうもわからんぞ。リミッターくらいならあんたが勝手につけることもできたろう? その程度のことで国家どころか世界を相手に誘拐事件を起こそうとするとは、とても思えないんだが?」
ヒプノスはその問い答えず、暫く無言でうつむいていたが、やがて意を決したように顔を上げていった。
「そうですね、もうお話しましょう。
こちらで進めていた別のプロジェクトがあるのです。
それを民間に譲渡し、存続させること。それが私の一番の条件なのです。それには移行させるまでの費用や安全を保証してもらいたいのです」
そこまで聞いて、少佐はヒプノスから渡された報告書の内容を思い出した。
「たしか、費用のかなりの部分に、生命維持装置などの経費が入っていたな」
それを聞いてヒプノスは驚いたようにまじまじと少佐を見つめた。
「……参りましたね。その通りです。
私の、いや私たちの最後の計画は……」
そこまでヒプノスが口を開いたところで、少佐は耳障りな雑音が、自分の周りを取り巻くのを感じた。
「な…なんだこれは!?」
雑音はやがて耐えきれぬほどの音量と化した。そして少佐は自分の体にまるで稲妻のような青白い光が取り巻く。
「少佐、まずい、誰かがあなたのダイブポイントに外的攻撃を仕掛けているようだ!」
そういうとヒプノスは、素早い動きでキーボードを操作し始めた。
目の前のスクリーンには滝のような早さで、数字や文字が流れている。
「接触が切れる前に、あなたを戻さなくては、さもないと…」
少佐はもはやヒプノスの言葉を、最後まで聞くことは出来なかった。

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