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16 Cost of Resurrection

mission 16 【代価】

それは夢の中の出来事のようだった。
レジスタンス達はまるでヒプノスの駒だ。自分が誘導されているのを気がつかず、次々とこちらの手に落ちていった。
ヒプノスは少佐の装着したヘッドセットを通し、状況に応じて指示を出す。シミュレーションと違った行動をとれば、即座に計算され直した指示が、少佐に伝えられる。
30分もしないうちに、作戦は終結した。こちらの被害は数人のV.I.が撃たれはしたが、深刻な被害はなかった。ヒプノスはある程度のレジスタンスを拘束すると、それで撤退の指示を出した。拘束されたレジスタンス達が、V.I.に連行されていく。その先に何が待っているのか、少佐はあえて詮索したくなかった。

この日、クラークもマイヤーも姿を現さず、少佐は心密かに安堵した。果たしてマイヤー/タナトスはこの事態を事前に察知していたのだろうか?
だとすると何かしらの反撃をしてくるかもしれない。

少佐がヒプノスの元に戻ると、彼は満面の笑顔で少佐を迎え入れた。司令室には珍しく数人の男女が待っていた。国籍も年齢もまちまちだが、それぞれが着用している軍服の階級章を見ると、ある程度の地位の者ばかりだ。これが部長の言っていた、寝返ったとされる情報将校達だろう。
「これで貴方も正式に、私のスタッフとしてお迎えします」
ヒプノスは少佐の肩に手をかけ、作戦室の中央へと向かった。
中央の席に座ると、隣に座るようにと身振りで少佐を促した。
「ちょっと待て! 俺はあんたの部下になるつもりはないぞ。
 ただ目的のために協力する、と言ったのを覚えているか?」
そういって少佐は立ったまま答えたが、ヒプノスはただにっこりと笑い、いすを指し示す。
少佐は根負けをして、どっかりといすに腰掛けた。
周りにいる男達もそれぞれが席に着いた。
「諸君、君たちの協力なしでは、決してここまでたどり着けなかったろう。
裏切り者の汚名を着せられ、それでも私に協力をしてくれた君たちには
なんと感謝したらよいかわからない」
そこでヒプノスは言葉を切り、周りを見渡した。
誰も口を開くものなく、ただ真剣な眼差しでヒプノスを見つめるのみ。
「いよいよ作戦を開始するときが来た。
後もう少しで我々は、彼らの動きをかなりの所まで封じ込めることができる。
その時初めて彼らは我々との交渉のテーブルにつくだろう。
この世界は実体がない。理想の世界にも、悪夢の世界にもなりうる。
我々はどんな事があろうとも、ここを守らねばならない」
少佐はヒプノスの話に混乱した。ちょっと待て?何の話をしているんだ?
少佐の表情を読みとったヒプノスは、少佐に向かって声を出さずに口を動かした
〈後で…〉
唇を読みとり、少佐は黙って頷いた。
ひとまずは話を聞こう。ここで何が起こっているのか、知らないのは自分だけらしい。何かが起こっている。そしてそれを知る彼らは、裏切り者の汚名を来てまでそれを阻止しようとしているのだろうか。
ヒプノスは一人一人の名前を呼び、指示を出していく。指示を受けた数人は、即座に席を立ち、退出していった。
ひとしきり指示を出し終え、最後に少佐の方を向くと一枚の紙を渡した。今回の計画の報告書だ。
「これを発表します。貴方も立ち会ってください」
そう言うとヒプノスは立ち上がり、少佐に身振りでついて来るようにと促した。
後には残った数人も続く。部屋を出て、一行はまだ少佐が足を踏み入れたことのない部屋へと入っていった。少佐は部屋に入ると、一瞬周りが見えないほどの光量に立ち止まった。少し目が慣れるとどうやらここはスタジオの中らしい。促されるままヒプノスの隣に腰掛け、カメラを向けられた。
カメラの赤いランプが点滅する。もう放送は始まっているのか。ここで今更姿を隠そうと逃げ出しても、もはや遅い。少佐は覚悟を決めて、カメラを見つめた。
ヒプノスは作戦の成功を報告し、残るレジスタンス達に投降を勧めた。


目の前のスクリーンに映る少佐の姿を、Aは信じられぬ思いで見つめていた。
少佐の表情からは何も読みとれない。
これが彼の意志なのか、それとも強要されたのか……。
「何故だ、何で少佐がヒプノスなんかと?」
ヴァルターはAの肩にそっと手を置き、言葉を探しあぐねている。
「アレクシス…こう言ってはなんだけど、よくあることなんだ。
私たちは今まで何人も、ヒプノスの元に行ってしまったのを見ている。
どんなに意志の強い者でも、ヒプノスには逆らえないんだ」
「そんな…そんなはずはないんです。少佐は誰よりも任務を遂行できる意志と力を持っているはずなんです!」
Aの必死の訴えにも、ヴァルターは仕方ないと言わんばかりに首を振るばかりだった。
このままでは納得がいかない。Aはいてもたってもいられずに、この場を後にした。
誰かが彼を止めようとしたが、ヴァルターがそれを制した。
「今はまだ、整理がついてないだけだ。しばらく一人にしてやれ」

少佐に会って話さなければ。
しかし少佐の居場所は依然わかっていない。今もまだ伯爵は一緒なのだろうか?
足は自然と最初に伯爵と出会った場所へと向かっていた。
夕刻となると、あたりは人気が全くなかった。もちろん、伯爵もここでは見つけることはできなかった。
仕方なく、あてどもなく周りを歩き続けた。
少し離れた場所に、明かりが漏れている。近づいてみるとどうやらパブらしい。
中から音楽や人の声が聞こえる。
奥のラウンジに一人で座っている金髪の男が目に入った。
「は、伯爵!?」
伯爵は自分をそう呼ぶ声に驚いて振り向いた。彼をそう呼ぶのは少佐だけのはずだが…
近づいてくる男には見覚えがあった。少佐がAと呼ぶ部下だ。
「やあ。確かAさん、でしたね」
にっこりと笑い隣の席を勧める伯爵の肩を、Aは乱暴につかみ、前置きなしに言った。
「伯爵!さっき僕はテレビ放送で少佐を見たんです。
しかもヒプノスと一緒に!」
“ヒプノス”という単語に、一瞬周りの人間の動きが止まる。
まずい。ここでこの名前を出すべきではなかったと、今更ながらAは声を潜めた。
「お願いです! 何があったのか教えてください!」
「困ったね。教えるなと言われてるんだ。だけど、少佐から伝言はあるよ」
「なんですか?」
「帰れ」
「え?」
いきなり何を言われたのかわからず、Aはぽかんとしたまま立ちつくした。
しかしその後に、それが少佐の伝言だと言うことに気がついた。
「そんな? だって少佐はこの世界で身動きがとれないんじゃないですか?
僕の助けは…せめて情報の交換くらいはできないんですか?」
伯爵は困ったように首を横に振るだけだった。
それでもAはあきらめずに伯爵を説得しようと、身を乗り出した。
その時Aに近づく者があった。
「今ヒプノスって聞こえたぜ。
ここでそんな名前を口に出すとは、よそもんだな。
しかもこのV.I.と一緒にいるって事は、おまえ、少佐の部下か?」
「クラーク?」
確か少佐は彼らののアジトを襲撃したのでは無かったか?
伯爵がAに注意を促そうとする間もなく、クラークはAの鳩尾に拳を打ち込んだ。
崩れ落ちるAを肩に担ぎ上げる。
「な、何をするんだ、下ろすんだ!」
伯爵があわててAを取り返そうと近づいてみると、クラークの右手にはいつの間にか銃が握られ、
ぐったりとしているAの腹に突きつけられていた。これでは手を出すことができない。
立ちつくす伯爵に、クラークは言った。
「こいつは連れて行く。少佐にあったら伝えとけ。
おまえの部下を預かったってな。これ以上俺をこけにすると、
かわいい部下がどんな目に遭うかってね。
返してほしけりゃ、少佐一人で来い。
あんまり待たすなよ。俺の気はそんなに長かねえからな」

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