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06 The search for Major Eberbach-2

mission 6 【探査-2】

「僕も少佐のいる所へ行って、無事を確かめさせてください!」
普段激高する事のないAの勢いに押され、部長は思わずたじろいだ
「お、落ち着いてくれ。君があちらへ行って、少佐を見つけだせるとは
 限らんだろう。むしろ君自身に危険が及ぶ可能性の方が高い。
 よく考えるんだ」
「でも、このまま少佐を見捨てるなんて事はできません!」
Aはあくまでも食い下がる気だ。
しばらくふたりのにらみ合いが続いた。
やがて部長は諦めたように溜息を付くと、なにやら引き出しを探った。
「焦る気持ちは分かるが、君が行く気ならそれなりの準備をしたまえ。」
そう言うと部長はAに「極秘」とスタンプの押されたファイルを手渡した。
「本来なら君に見せるものではないんだが、少佐が不在の今、君に協力してもらうしかない
 2時間でこのファイルを読んで、戻ってきたまえ。状況が把握できた後に話し合おう」
話は終わりだと言わんばかりに部長は電話を取り、番号を押した。
受話器を片手に、Aに早く出て行けともう片方の手をドアに向かって振った。
「ああ、儂だ。またひとり送って欲しい。今度はしくじるなよ…」

自分の席では極秘ファイルは開けない。Aは駐車場に行き、自分の車の中でファイルを読み始めた。
ファイルはまるでゲームの攻略本のようだった。最初はこの計画の立案者の説明や、おおまかなシステムの説明だったが、残りの大半はその世界で行動する際のマニュアルだった。
それによると、あちらでは自分の意識と行動力に微妙な差が出るらしい。
夢の中で走るとき、まるで水の中に入っているようにしか動けないのがそれだ。
被験者は先ず自分の動きをコントロールすることから始まる。できれば一日に10分程度から始め、1週間でその世界に慣れるというのが理想だ。希に意志の強いものが、 初日からこの世界と同等の動きを出来るものもいるそうだ。もしかしたら少佐もこの中に入っているんだろうか。それとも少佐はいきなり夢の世界にいって、本来の自分の力を出せないでいるのだろうか。
最初は自分が中に入って少佐を見つけだし、一緒に帰ってくればいい、そんな甘いことを考えていた。
しかし肝心の少佐の本体が行方不明だ。会う事は出来ても、彼が自分の本体の場所を知らない限り、帰還しても助けることは出来ない。また、ポイント毎に帰還コードは違うから、同時に戻ることは出来ない。
自分は役立たずだ。このまま少佐がどうなっているのか、ただ待つしかできないのか…。

僕に出来ることは…。まずやるべきことは2つだ。情報収集とそれを少佐に伝えること。
Aは手帳を取り出し、いくつかの項目を書き出した。
・ヒプノスという男の正体、経歴を探り出す。
・彼が反乱を起こした動機を突き止める。
・ヒプノスの行動を探り、第3の接触ポイントの候補を絞り出す。
・少佐を捜しだし、以上の情報を伝え、指示を仰ぐ。
書き出す分には簡単だ。
あの世界をコントロールしているコンピューターは、何十ものファイアーウォールに守られて、外部からの侵入は出来ない。接触ポイントをコントロールする端末は、機能限定されている。もしここから侵入を試みれば、特異点へのアクセスが出来なくなる可能性が高い。だとすればホストコンピュータを探しだし、そのネットワーク上から入るしかない。
どこにホストコンピューターがあるのか…。
情報の規模から考えて、コンピューターは並の容量と処理能力では、あの世界をコントロールできない。以前スーパーコンピューターと言われるマシンを見たことがある。ほんの数年前だが、今はそれより格段に性能は上がり、サイズは小さくなっているだろう。施設はそんなに大きくないかも知れない…。
そうだ…!!
Aは車を飛び降り、情報部へと戻った。
「おい、A!どこへ行ってたんだ?そろそろ出ようかって話してたとこなんだ」
脳天気にCがやってくるのをつかまえ、口早に指示を出す。
「緊急事態だ。この数カ月でいい、指示するエリアで異常に電力を使う施設をリストアップしてくれ。
 特に昨年から急激に電力の供給が増えた施設、又は自家発電を導入した施設のリストアップだ」
こんな時、誰も文句を言わず、すぐさま行動に移すのは少佐のお陰だな。Aの指示で全員が自分の席に戻り、作業を始めた。
スーパーコンピューターを見学したとき、驚いたのはその電力の消費量だった。一度でも止まってしまうと、再起動までに数時間、へたをすると復旧に1日以上かかることもあるという。実験の規模から考えて、どんな施設にカムフラージュされても、電力だけはごまかせない。
施設の探索はみんなに任せ、こちらはヒプノスの正体を捜そう。
さっそく情報部の情報分析室に向かう。Aの友人でもある研究員が待っていた。
「やあ、A君待っていたよ。週末の時間外労働…高く付くぜ」
「すまない、こんど奢るよ」
軽口を叩きながらも彼はすばやくキーボードを叩き、いくつかの画面を表示させた。
Aが目で追うのもやっとのすばやいスピードで、スクロールされていく画面を読みとっていく。
「ヒプノス…こいつは天才か?ものすごい数の研究レポートが彼の名前で出てるぜ。
 情報処理から生体学、神経伝達システムのシュミレーション…
 こいつは人間そのものを、コンピューターで再構築してるみたいだ。
 それだけじゃない、軍事作戦にも参謀として参加している。ひとりで数人分の働きをしてるぞ。」
「彼の本名や出生についてはどうだ?」
「それについては…やられた。抹消済みだ」
「やっぱり。仕方がない、ヒプノスの過去5年間の行動を、時系列にそってリストにしてくれ。
 僕はまた戻ってくるから、あとはお願いするよ」
そういうとAは部長のオフィスへと向かった。2時間はあまりに短すぎる。

「失礼します」Aがオフィスにはいると、部長と見慣れぬ白衣姿の男がいた。
「覚悟は良いな。 A君。君は訓練期間無しに行くんだ。
 無理はするな。今回は君があの世界へ慣れるために行くんだ。
 その間こちらは情報収集しておく。今回は6時間で強制帰還させるからそのつもりでいてくれ」
「今回の接触ポイントは街の南西部の一角にあるものを使います」
白衣の男がAにクリップボードを渡しながら言った。
クリップボードには誓約書と地図が挟まれている。
「街中はヒプノスの監視下におかれているので、危険性は高いのですが、
 今回はここを使えとの指示が出ています。時間優先と言うことです。
 あなたがもっと安全な所を希望するようでしたら、安全な特異点に設定し直します。
 私としては安全策をお薦めします」
「いえ、構いません。時間が無いんです」Aはきっぱりと言った。
「解りました。それでは案内しましょう」
白衣の男について、Aは情報部を後にした。
どんなことがあっても、絶対に諦めない。必ず少佐を見つけだしてやる。
そう強く心で念じながら。

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