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03 The realm of enchantment-1

mission 3 【幻惑の王国-1】

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「ここからあと約3キロ行ったところに、街がある」
伯爵について森の中を歩いていると、前方が明るく開けている。どうやら道に出たらしい。
「おい、伯爵…」
結局この顔を見ると、ナビゲーターというよりこの呼び方になってしまう。
「よかったらドリアンと呼んでもいいんだよ。少なくとも私はここでは伯爵ではないからね」
そう言われても、ファーストネームで呼ぶ方が気持ちが悪い。少佐は伯爵の言葉を無視して続けた。
「伯爵、これから行く街は、何と呼ばれている?人口はどのくらいなんだ?」
「私たちはただ“シティ”と呼んでいるよ。いまのところ唯一の街だからね。
 V.I.は千人近くいるはずだけれど、人間は30人ってとこかな。
 ヒプノスの軍も20名いないと思うよ」
「それだけの人数で、この町を掌握しているのか?」
「数が問題じゃない。彼の力が問題さ」
「そいつを仮に捕まえるとする。そのあとは?」
ここで捕まえても、肝心の本体は現実世界のどこかにいるわけだ。どこかに閉じこめたところで、本当の意味で捕縛したことにならない。未だ少佐は自分がここに送り込まれた意味を、計りかねていた。
「彼から帰還コードを聞き出す。
 彼の知っているコードは、いわばマスター・キーだ。
 それさえ手に入れれば、この世界を掌握したも同然だよ」
「簡単に言いやがる。そんな風にほいほいと言うもんか」
「その時は…殺すしかないね」
伯爵の、あまりに伯爵ならぬ言いように少佐は驚いた。
「驚くことはないだろう?そもそも君の任務は、混乱を収めることだ。
 一番簡単な方法を示しただけだよ」伯爵は全く悪びれる様子もなく言った。
「お前らV.I.はそんな簡単に人の生死を考えているのか?」
「そもそも生まれたことを覚えてないんだ。
 死ぬってことがどんなことか分からないんだ。」
「“シティ”にいるお前のお仲間も、そうなのか?」
「たぶんね。でも人間と関わって、色々学んでいくうちに、変わっていくやつもいるよ。
 私が初めてあった人間が君だ、少佐。私は君から学びたい」
そう言って伯爵は少佐の目を真っ正面から見つめた。まるで子供のような純粋な好奇心…。
「それがお前が俺を案内する理由か」
「そう…かもしれない」

その後伯爵は、無言で歩き続けた。
やがて道は砂利道から、舗装された道路へとかわり、目の前に検問のようなものが現れた。
検問の向こうは、ただの平原が広がっている。
伯爵は、何も気にする様子無く歩いていく。少佐は慌てて伯爵を引き留めた。
「検問だ、大丈夫なのか」
「これはただの入り口のマーカーみたいなもんだよ。
 大丈夫。私たちは止められないよ。
 …それより…暫く並んで歩こう。」
伯爵はそう言うと、少佐の腕をつかみ検問に向かって歩き出した。
入り口って言ったって、この先に街なんて見えないじゃないか?少佐は混乱しながらも、伯爵に従って歩く。
検問は簡単な門のような作りだ。両側に軍服を着た男二人が立っているが、少佐達を気にする様子はない。
少佐は門をくぐった時、軽いめまいを覚えた。少佐の腕をとる伯爵が、ほんの少し握る力を強めたように感じた。

——そして…
いきなり目の前に、ビル街が開けた。

思わず声を上げそうになる少佐の腕を、伯爵がさらに強く握り、無言で足早に通り過ぎた。
「な、なんだ、今のは!?」
少し離れた路地を曲がって、少佐は伯爵の腕をふりほどいた。
「ここが“シティ”だ。前は検問の外からも街の様子が見えたんだけど、
 ヒプノスがこの街を支配して以来、こうなったんだよ。
 ここで君に騒がれたら、まずいことになっていたよ」
「ならば先に言え!」
パニックになりそうだ。
ここが仮想現実だと言うことは、分かっていたつもりだが、こうも現実離れしたことに直面するとは…。
「君ならば対処できると思ってたんだ」
真っ直ぐに少佐を見つめる伯爵を見て、少佐はだんだんと落ち着きを取り戻してきた。
こいつは本当にガキと同じなんだ。おかげで腹が据わったぜ。
役に立つのか、立たないのか、分からないところはやっぱり「伯爵」だ。
「ともかく、どこか落ち着ける場所を探そう」
「それなら大丈夫。この先のパブの2階を借りてあるよ。
 モニタもあるから、外部との連絡もできるはずだ」
「助かった。」
「これでも案内人だからね。」
そう言って、伯爵は歩き始めた。
何度か路地を曲がり、広場のような場所に出た。角にパブらしき建物がある。
少佐は頭の中で、検問からここまでの道のりを頭にたたき込んだ。

パブの中に入ろうとした時、少佐はひとりの男とすれ違った。
男は少佐を気にすることもなく、通り過ぎていった。
「今の男…」何か引っかかる。
「どうしたんだい、少佐?まさか知り合いって訳じゃないよね?」
「今のは…人間か?」
「ああ。たぶんね。最近よく来るようになったけど、名前は分からないし、どっちの見方かも分からないよ」
「まさか…」確か…あの顔は…??
伯爵が無言で少佐の様子をうかがっている。
「確かではないんだが、数年前にあの男と似たやつを知っていた」
「じゃあ、彼も軍人で、何かの作戦でここに来ているんじゃ…え?知っていた?」
「そうだ。もし彼が俺の知っているやつならば、彼は去年戦死したはずだ」

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